土曜の夜は★9
少しずつ自分をこぼしてゆく袋 ゆい
「こんなに袋ばっかりためて。
捨てなさい。捨てなさい。
空っぽになった袋は、もう役目を終えたのよ」
色あせた袋の底にかすかに残っていた思い出も、
あっさり一緒に捨てられてしまった。
空っぽになった私も、いずれこうやって捨てられるのだろう。
そのときかすかに残っているものは何だろう。
少しずつ自分をこぼしてゆく袋 ゆい
「こんなに袋ばっかりためて。
捨てなさい。捨てなさい。
空っぽになった袋は、もう役目を終えたのよ」
色あせた袋の底にかすかに残っていた思い出も、
あっさり一緒に捨てられてしまった。
空っぽになった私も、いずれこうやって捨てられるのだろう。
そのときかすかに残っているものは何だろう。
春爛漫フルーツタルト切り分ける ゆい
イチゴ、キウイ、ピーチ、ブルーベリー……
果物がてんこ盛りになったフルーツタルトにナイフを入れる。
2枚の皿に取り分けて、カップに紅茶を注ぐ。
午後の日差しに緑が揺れている。
静かだ。
……寂しくなんかない。
二皿目を引き寄せる。
撫で肩のままで言葉を浴びている ゆい
浴びせられる言葉が、
耳から、目から、鼻から、口から、
皮膚全体から私の中に入り込んでくる。
反発する気も起きない理不尽な激しい怒り。
やがて体をあふれた言葉は、私の両肩を滑り落ちてゆく。
私の愛しい撫で肩よ。
母と私がくり返される私と娘 ゆい
母と私と娘、3人で旅をしていた。
疲れ果てて着いたホテル、母はすぐベッドに入った。
食事は? お風呂は? と尋ねるが、柔らかな寝顔は微動だにしない。
窓が次第に夕暮れてゆく。
いつの間にか、娘が部屋から消えている。
そして私は突然気付く。
母に声をかけているのは娘で、ベッドにいるのは私自身だ。
静かな、いい死に顔だった。
ポケットにつかまり渡る交差点 ゆい
ポケットが好きだ。
ポケットのない服を着ると、忘れ物をしたような気持ちになる。
パッチポケット、スラッシュポケット、ハンドウォーム・ポケット……。
男のコートのポケットに、ぬくぬくおさまった夜もあったなぁ。
今の私にあるのは、この二つのポケットだけ。
これで十分。信号は青だ。
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