土曜の夜は★9

少しずつ自分をこぼしてゆく袋     ゆい

「こんなに袋ばっかりためて。
捨てなさい。捨てなさい。
空っぽになった袋は、もう役目を終えたのよ」
色あせた袋の底にかすかに残っていた思い出も、
あっさり一緒に捨てられてしまった。
空っぽになった私も、いずれこうやって捨てられるのだろう。
そのときかすかに残っているものは何だろう。

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土曜の夜は★8

春爛漫フルーツタルト切り分ける     ゆい

イチゴ、キウイ、ピーチ、ブルーベリー……
果物がてんこ盛りになったフルーツタルトにナイフを入れる。
2枚の皿に取り分けて、カップに紅茶を注ぐ。
午後の日差しに緑が揺れている。
静かだ。
……寂しくなんかない。
二皿目を引き寄せる。

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土曜の夜は★7

撫で肩のままで言葉を浴びている     ゆい

浴びせられる言葉が、
耳から、目から、鼻から、口から、
皮膚全体から私の中に入り込んでくる。
反発する気も起きない理不尽な激しい怒り。
やがて体をあふれた言葉は、私の両肩を滑り落ちてゆく。
私の愛しい撫で肩よ。

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土曜の夜は★6

母と私がくり返される私と娘     ゆい

母と私と娘、3人で旅をしていた。
疲れ果てて着いたホテル、母はすぐベッドに入った。
食事は? お風呂は? と尋ねるが、柔らかな寝顔は微動だにしない。
窓が次第に夕暮れてゆく。
いつの間にか、娘が部屋から消えている。
そして私は突然気付く。
母に声をかけているのは娘で、ベッドにいるのは私自身だ。
静かな、いい死に顔だった。

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土曜の夜は★5

ポケットにつかまり渡る交差点     ゆい

ポケットが好きだ。
ポケットのない服を着ると、忘れ物をしたような気持ちになる。
パッチポケット、スラッシュポケット、ハンドウォーム・ポケット……。
男のコートのポケットに、ぬくぬくおさまった夜もあったなぁ。
今の私にあるのは、この二つのポケットだけ。
これで十分。信号は青だ。

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